岡崎さんのウェールズ滞在日記15

岡崎さんのウェールズ滞在日記15


15.日本の教科書を学ぶ効用

 前にもお話しさせていただいたように、娘は生まれてからほぼ12年間海外で生活し、中学一年生で日本の学校に入学しました。
 中学に入りたての頃「記入してね」と友人から渡されたカードに“芸能人では誰が好き?”という欄があり、「“芸能人”って何?音楽家のこととか、かなあ、、、?と思ったから、モーツァルト、って記入したの。」というような娘です。今では、ほんとにあの頃って、何にも日本のこと知らなかった、、といって笑いながら当時の自分を愛しんでいる娘ですが。

 先日、「体育の授業の合間に、みんなで懐かしんで“ちいちゃんのかげおくり”をしてみた」と娘がおしゃべりをはじめました。そういえば『ちいちゃんのかげおくり』という単元が小学校低学年の国語の教科書にありました。父親が出征する前に家族でお墓参りに行き、晴れた空のもと、家族で“かげおくり”という遊びをする場面があり、わたしにも記憶に残る戦争の時代の話です。娘は「小学校二年か、三年くらいのときに、国語の教科書にあったでしょ、あれ。なんか、みんなと一緒に、空を見てたら、“ちいちゃんのかげおくり”の話がでてきて、できそうだね、って言ってやったの。結構おもしろかったよ。それに、あー、その頃みんなとは遠く離れていたところに住んではいたけど、なんか、日本とつながっていたんだなぁ、と思えて嬉しかった。ほら、給食の話とかは、ついていけないから。やっぱり、日本の教科書やっていて良かった。」と言っていました。

 高校二年生になって、小学校時代ウェールズ補習校に通わせていただいて、日本の勉強をしていたことを“良かった“と再認識できることもあるのですね。外国に住んでいて日本の教科書を学ぶということは、学習という面以外の効用もあったのだと、初めて気づきました。
 そして、なるほど、ついていくのが大変だったのは、勉強ばかりではなく、いろいろなところで疎外感を克服しながら生活してきたゆえ、出てきた娘の言葉なのだと思うと、胸にしみいるものがありました。

 あと一年で、娘も大学受験をすることになります。やっと、最近日本の勉強のシステムに慣れてきたというか、そうするしかないのだということがわかってきたようです。様々な矛盾や理不尽さを自分なりに納得するように努め、成長してきた4年半だったように思います。受験は大変ですが、大学受験は自分の将来を真剣に考える機会にもなりますし、子供を成長させてくれるチャンスだと思いますので、この試練を突き進んでほしいと願っています。

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