岡崎さんのウェールズ滞在日記18

岡崎さんのウェールズ滞在日記18

18. 小さな訪問者

イギリスでこどものお楽しみ行事といえば、ハローウィンもその中のひとつでしょう。 こどもが小さい頃マレーシアにいたときに、住んでいたコンドミニアムの中で大人が企画したものに参加させたことはありましたが、見知らぬお宅にまで訪問する本格的なハローウィンは初めてでしたので、わたしにも新鮮な経験でした。

イギリスでの初めてのハローウィンは、わたしが少し離れて付き添いながら、仮装をした兄妹で近所を何軒かまわって、お菓子をいただいていました。ベルをならしていいのは、外灯がつけてある家で、一度ベルを鳴らして誰も出て来なかったらハローウィンには参加していないお宅というサインのようでした。

ある一軒のお宅では、こどもがベルを鳴らしたら、玄関が開きました。するとこどもたちが家の中、奥まで入って行くのが見えました。あらら、と驚きその家の周りをうろうろしていたら、そのうち、二人ともニコニコして出てきました。ベルを鳴らしたところ、玄関にでてきたおばあさんが、仮装をした二人を見てとても喜び、「中に入って!おじいさんにも見せたいから。」と言われたらしく、「椅子に座っている病気のおじいさんに会ってきた、すっごく喜んでくれて、お菓子ではなくて1ポンドずつもらった!」とこどもたちは言いました。おそらく、おじいさんは動けないのでしょう。変化の少ない生活のなかに、久しぶりの小さなおばけたちの訪問を喜んでいただけたのかな、と思うとこちらまで嬉しくなってきました。

それにしても、お菓子の代わりに20ペンス程度のコインをくださる方がいることにはびっくりしました。でも確かに小さいこどもがいないお宅などにはこどもの喜ぶお菓子が常備されていないのでしょうし、現実に即していますよね。

その翌年のハローウィンでは、9歳の息子の友人のジョルダンが訪れて一緒に回ることになり、娘もついていきたがり、息子の友人のアンドルも加わって、4人であちらこちらと回ったようです。

出掛けてから2時間後、暗くなってしまい心配していたところに、4人の可愛いおばけ達は山のようなお菓子を抱えて戻って来ました。玄関に4人で座り込んで、それぞれの大小の袋に入った、いただいてきたお菓子を全部ざーっとそこに出し合い、仲良く分けていった姿がことさら印象に残っています。ジョルダンもアンドルも娘に優しく接してくれていましたし、大げさですが、ウェールズの自然あふれる土地柄が、他の人への鷹揚な接し方を培っているのかなと思いました。こどもの話ではあるお宅でベルを鳴らしても誰も出てこないので、一人が庭の方まで入っていってしまったら、その家の人に怒鳴られた、などという貴重な経験もしたようです。また、翌朝の噂で、Trick or treat と言ってお菓子をくれないと生卵をその家に投げつけた大きい年齢の子がいた、などというのを耳にすると、ハローウィンもちょっとやり過ぎる人がいると怖いなと思いました。見知らぬ人が訪れたり、訪れられたりするハローウィンという行事は、平和な土地柄だから参加できるものなのかもしれませんね。

見知らぬ子が突然訪れた経験と言えば、クリスマスも近づいたある夕方、夕方といっても、その時期だともう暗かった頃、玄関のベルが鳴りました。玄関に出て行くとガラスに小さい影がふたつ、どうしたのかと思いながらドアを開けると、突然歌い出す二人の子供、わたしは、目が点になり、一体どうしたものかと思っていたら、歌い終わった二人は、立って私をみています。思わず、拍手して、お上手ね、といったものの、二人は私を見ています。どうしたものかと思っていたら、二人は一言も発せずに、帰って行きました。不思議な子がいるものだ、と思っていたら、後で理解出来ました。

イギリスでは、子供が他の家の玄関に行ってノックをし、クリスマスキャロルを歌うと、その家の人はお金をあげる、という習慣があると知りました。

だからあの子たちは、わたしをじっとただ見ていたわけですね。失礼しました。その後はそういう経験はなかったのですが、今でもクリスマスキャロルを歌う小さな訪問者はいるのかしら。

日本では、見知らぬ子にお金をあげる、という機会はないですし、そのような風習も聞いたことがありません。お年玉をあげるのも、知り合いの子だからですし。見知らぬ訪問者にお金をあげる機会や習慣があるのもコミュニティで子供を育てていくという意識や奉仕の精神などが関係しているのかなと思いました。やはり、他の国で生活してみてわかることって多いですね。(2013年1月)

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