岡崎さんのウェールズ滞在日記22

Wales滞在日記22

22. わたし自身のWales での生活

Wales 滞在日記もご無沙汰しておりました。息子は、大学院2年で、就職活動も終わり、研究室で研究のまとめへの忙しい日々を過ごしております。娘は、大学3年生の後半が始まり、一年間交換留学で米国にいた分、単位も沢山とる必要があり、しかも体育会に所属している為早起きの日も多く、夏休みに培った休養エネルギーを使う時機到来のようです。 息子や娘の話は次回にして、今回はわたしがWalesでどんな風に過ごしていたか、をお話ししてみようかなと思います。

現在、わたしは、Bon-bon Sucre というお菓子、シュガークラフト、紅茶を自宅などで、ご一緒に作ったりお教えしたりする教室をしています。お客様は一月に数回いらっしゃる程度のこじんまりしたものですが、わたしがライフワークにしたいと思っていることです。 手作りお菓子の美味しさに目覚めたのは、10歳のときでした。新聞にレシピが掲載されていた“リンゴのポロポロ焼き”を母が作ってくれて、それが大変美味しかったことからです。そして、高校生の時初めて作ったシュークリームが全くふくらまず落胆したことにより、何度も作って美味しいものが作れるようになる喜びを覚えていきました。そして、会社に就職した後に出会った東京製菓学校、なんと仕事を続けながら夜学で洋菓子課程を卒業しました。当時シュガークラフトを製菓学校では学べず残念に思ったものの、ご縁があり個人の先生にシュガークラフトを少し学びました。そして、それをいつかきちんと学びたい、と心のどこかでずっと思っていました。 時が流れ、マレーシアでの5年余りの生活が終わる頃、次に、イギリスへの赴任が濃厚になって、日本へ一旦帰国。帰国後、英国への赴任はなくなるかも、と夫から話された時、わたしが夫に言ったのは、「絶対ヨーロッパで暮らしてみたい!」でした。真剣な顔だったと思います(笑)。その後、幸運にも英国赴任が決まり、マレーシアから帰国して7ヵ月後にはWalesでの暮らしが始まったのです。

とにかく、まずは子供の学校を整えること。子供が無事、学校に通うようになってからは、自分のことです。何と言ってもシュガークラフトの本場は英国です。その英国に住めるのですから、シュガークラフトを学びたい、と思いました。でもどこに行ったら教えてくれるのかしら?と考え、Bridgendの街のキッチン道具屋さんに行ってみました。そこで、「シュガークラフトを学びたいのですが、教えてくださる方いませんか?」と聞いてみると、ジョアンがいいわよ、とジョアンを紹介してくれました。ジョアンは78歳で、ご自宅に伺ってのレッスンですが、大変刺激を受けたことばかりでした。  まず、英国人に物を教わるのが初めてですから、私は大変緊張したのですが、本当に、ジョアンは親切で、わかりやすいジョークを言って、楽しいレッスンでした。しかも、現在に至るまで、シュガークラフトの薔薇をたくさん見ましたが、彼女の薔薇ほど、素敵なものはなかったのではないかと思えるくらい上手でした。しかも、惜しみなく教えてくださるのです。正直、日本でシュガークラフトを習っていたときは、なんだか間違ったことはしてはいけないと怯えながらのレッスンでした。本当に、英国で学ぶことができ、よかったです。しかも、居心地がものすごくいいのです。まずは、マグカップに紅茶をたっぷりいれてくれて、褒めながら、丁寧に指導してくださる。その上、レッスン料が余りに安くてびっくりでした。日本でのレッスンの1/10です。わたしにとっては、英国に住めたことは、今思うと宝くじに当たったようなものでした。  しかし、ジョアンとのレッスンは、長くは続きませんでした。ある日、ジョアンのお嬢さんから電話があり、体調が悪いので、レッスンは続けられない、とのことでした。突然のことで、大変残念でした。ジョアンは引越しをし、その後も手紙のやりとりはしましたが、会えるといいね、で終わってしまったので、会いに行けばよかったな・・と今でも思ってしまいます。  ジョアンから教わったのは、シュガークラフトばかりではありません。ジョアンには、双子のお姉さんがいて、「双子の姉が、今度大学に入って勉強するの」と言われたときには、聞き直してしまいました。80歳近くになって大学で勉強?その人生への前向きさと力強さに、なんだか感動したのを覚えています。また、ジョアンが、わたしの三人目のハズバンドがね、などの話に、三人目かぁ・・と、自分の人生を逞しく生き抜くパワーを感じました。しかも、楽しそうに話すのです。人生いろいろあるけど、楽しまなくちゃね、というようなメッセージも頂いた気がします。そして、わたしがシュガーケーキデコレーションの繊細なアイシングワークを学びたいと申し出たときは、「わたしはそれは教えられないのよ、今度貴女ができるようになったらわたしに教えて!」と言われました。できないことはできない、という潔さ、曖昧なことを教えない、ということも学びました。居心地の良い空間で好きなことを学べる、ここでの経験が今のわたしのBon-bon Sucre の原点かなと思えます。

ジョアンのレッスンを受けられなくなり、再び、Bridgendのキッチン道具屋さんに行って尋ねました。「シュガークラフトやアイシングワークなどを教えてくれるところありませんか?」すると、Neath College がいいわよ、と教えてくれました。 Neath Collegeを 地図で調べると、M4を使って家から25分位のところでした。これなら子供の学校のお迎えに間に合う距離だと確認できたので、申し込みに出かけました。そして出会った素晴らしい先生がMrs. Side でした。本当に、普通のWales の親しみやすい、ちょっとふっくらした女性でしたが、大変技術が高く、もしかして・・・と思って調べると、華やかな受賞暦がある方でした。でも、全く偉そうなそぶりもなく、惜しみなく的確に教えてくださること、よくほめてくださること、やたらと道具を買わせず身近なものを使うところ、など様々な学びがありました。わたしが英語をよく理解できずにいても、試験に合格したり、受賞の機会を作ってくださったりと積み重ねを後押ししてくださった方です。 また、驚いたのは、娘の学校が休みとわたしの授業とが重なってしまいどうしようかと思ってMrs.Sideに話した時、迷わず第一声が「連れていらっしゃいよ」でした。え~っと思いましたが、わたしは授業を休みたくなかったので、お言葉に甘えて、娘を連れて出かけると、クラスメートも全くいやな顔をせずに、迎えてくれたので、驚くとともに大変助かりました。その後、娘はMrs. Side を「スマイリーフェイスの先生」と呼んでいました。そして、おまけですが、娘を連れて行ったとき、作品のスペルの間違いを教えてくれて、助かったこともありました。(苦笑い) 息子が腕の骨を折って家にいるときに、わたしの授業と重なったときもありました。そのときは、近所の人にベビーシッターでいい人いませんか?と尋ねると、わたしの家につれてくればいいわよ、と気軽に預かってくれました。今考えると、わたしは、自分の授業を欠席したくなくて、いろいろな方にお世話になっていたのだと再確認し、感謝の気持ちと、そこまでして学んだものを大切にしているかと自分に問い直して反省してしまいます。

Englandに引っ越したときは、シュガーケーキデコレーションで有名なBrooklands Collegeの近くに家を見つけてBrooklands College に通うことができました。考えてみると、家族を巻き込んでのわたしのシュガーワークの学びでした。やはり、沢山の方の支えがあって学べたものを大切にしていきたいと、今この文章を書きながら改めて思いました。そして、何より英国に連れて来てくれた夫に感謝、文句を言わずついて来てくれた子供たちに感謝、ですね。

最近の人生は長いですから、やはり、子育てが終わった後に自分が何をしたいかを考えて、とりあえずやってみることが大切ではないかな、と思っています。もし、上手くいかなかったらそこでまた考えてみればよいのではと。Walesの女性とお付き合いしてみて、彼女たちは、無理をせず、したいことを楽しく真剣に取り組んでいる、すべきことはきちんとやるが無理はしない、ように見受けられました。だから、息苦しくなく生きているようで、一緒に居て心地よかったのかな、と思います。彼女たちのことを想い出しながらミルクティーを飲んでいると、なんだか温かく、前向きな気持ちになってきます。

(2015年10月)

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