第11回 ナショナル・トラストの創世記2 - Alfriston Clergy Houseアルフリストンの牧師館/イースト・サセックス

ナショナル・トラスト最初の歴史的建造物

Alfriston Clergy House_©NTPL/Andrew Butlerナショナル・トラストの保存対象は、あらかじめ破壊が予測される自然的景勝地や歴史的建造物です。

現在ナショナル・トラストが保有する保護資産(プロパティ)はイングランド、ウェールズ、北アイルランドに300以上の歴史的建造物や庭園をはじめ、古代から残された森林や村落などの自然的景勝地、農村地帯など、その総面積は神奈川県よりも広いおよそ2500平方キロメートル。

そして約1120キロメートルにおよぶ自然のままの海岸線など多岐に広がっています。

なかでも現在保有するカントリーハウスのうち150は世界に誇れる美術館に匹敵するという評価を得ています。

まさに一国を代表する自然・文化遺産が国家や政府の力ではなく、市民ひとりひとりの意識と協力によって保護されているのです。

現在ではスコットランドを除くイギリス国民のおよそ16人にひとり、350万人を超える会員と、年間4万7千人にも及ぶボランティアの協力を中心に運営されています。まさに英国を代表する最大級の環境保護組織として、国民の生活に密着した存在となっているのです。

「ナショナル・トラスト」という名称は、今では環境保護運動の代名詞のように世界各地で使われるようになりましたが、この「ナショナル」という言葉には国家や政府、行政などを含まない、「国民の」という意味が込められています。

そして「トラスト=信託」という意味は国民の信頼の元に託された自然的景勝地や歴史的名勝地は、その信頼に答えるべく精神誠意命がけで守るという創立者たちの想いが込められているのです。

ナショナル・トラストが最初に所得した歴史的建造物は、イーストサセックスにあるアルフリストンの牧師館でした。創立の翌年、いまにも崩れ落ちそうな14世紀の藁葺屋根の牧師館を、歴史を伝える重要な文化財として、ナショナル・トラストがわずか10ポンドで買取ったのでした。

修復に350ポンドもかかるとわかった時、創立者のひとり、オクタビア・ヒルは英国の国民に向けた手紙を書き、『タイムズ』紙に送りました。

「牧師館を生かすか殺すかは、ナショナル・トラストの未来と共に、国民一人一人の心にかかっている、、、。」。この記事によって、多くの人々から寄付金が集まり、当時にしては莫大だった修復費用もまたたく間に集まったそうです。

以来、現在にいたるまで、ナショナル・トラストは多くの「アピール」と称した募金活動を行い、数々のプロパティの取得、修復を手掛けていきますが、これがその最初の「アピール」でもあったのです。

このナショナル・トラスト第2番目の財産は、現在は美しい中世の牧師館として、これまた古い町並みを今に残す、アルフリントンの町はずれに佇んでいます。チョークの粉をサワーミルクで溶いて固めてつくった壁。煙突のない時代の高い吹き抜け天井など、牧師館は中世の建築様式そのままに修復されています。

そして、ぜひ観てほしいものがあります。それは古い壁にわずかに残るオークの葉の彫刻を施した柱です。このオークの葉が、ナショナル・トラストのロゴマークの元となっています。

今では、欧州最大の環境保護団体として、そして、観光立国としての英国にとって、なくてはならない存在であるナショナル・トラストの、百年以上にわたる歴史の歩みが始まった記念すべき建造物として、この牧師館は「世界遺産」にも匹敵するような重要な文化財として、これからも永遠に残っていくことでしょう。

Information

Alfriston Clergy House
The Tye, Alfriston, Polegate, East Sussex BN26 5TL
Telephone: 01323 870001
http://www.nationaltrust.org.uk/main/w-vh/w-visits/w-findaplace/w-alfristonclergyhouse/

写真 ©NTPL/Andrew Butler

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