第14回「英国ナショナル・トラストを学ぶ」 

この夏休みを利用して、英国内の旅行を楽しまれた方のなかにはナショナル・トラストのプロパティ(保護資産)を訪問された方もいらっしゃるでしょう。英国を代表する全国紙「タイムズ」での数年前の記事ですが、「英国を楽しむための方法」として一番に上げられていたのは「ナショナル・トラストの会員になり、カントリーサイドを楽しむこと」とありました。お散歩大好き、自然大好き、そして歴史好きのイギリス人にとって、ナショナル・トラストのプロパティはもっとも手軽に、確実に楽しめる場所のようです。

さて、そのナショナル・トラストですが、スコットランド(注釈1)を除くイングランド、ウェールズ、北アイルランドにおよそ300ヶ所以上のプロパティを持っています。その各地で、まるで「お遍路さん」のように個展を開催している日本人画家・小野琢正のHENRO展も、今年で10年目を迎えました。そしてこの夏には、HENROはじまって以来のウェールズでの開催となりました。

会場となったのはSwanseaの北に位置するディネファー・パーク&キャッスル(Dinefwr Park and Castles)。 広大な領地にとてもロマンチックなマナー・ハウスがあり、ハウスの前に広がるガーデンはまるでお姫様が出てきてもおかしくないようなエレガントなフォーマル・ガーデン。ランドスケープ・ガーデン(風景式庭園)のように美しい広大なパークを散策していると、小高い丘の上には、これまたウェールズならではの城跡が・・・。

これまで軽く100ヶ所以上のナショナル・トラストのプロパティを訪ね、書籍や雑誌などを通じてご紹介させて頂いている私の目から見ても、景観、ハウスともに上位ランクに値するプロパティです。

そんな素敵な場所が会場とあって、張り切って個展開催に行ったのですが「・・・・??何かいつものHENROと違うな?」と・・・。何が違うかというと、その訪問者数の少なさでした。通常なら1日300人、多い日ならば千人超えもあるナショナル・トラストのプロパティ。

このディネファーであれば、当然の訪問者数かと思っていたのですが、少ない日は100人を切る有様。そして少ないのはその訪問者数ばかりではなく、ハウスガイドなどを務める地元ボランティアの人数も他のプロパティとくらべ極端に少なく、せっかくのハウスがちょっとガラ~ンとしているではありませんか!

ウェールズはイングランドにくらべ、ナショナル・トラストのプロパティが少ないのも事実ですが、ウェールズ内のプロパティはどこも素晴らしい場所ばかり。たとえば家族4人(大人2人小学生2人)で訪問しようと思えば、ディネファーの入場料はおよそ16ポンド。確かにこの金額を見ると高いのですが、タイムズ紙も掲げているように年間家族会員になってしまえば、およそ70ポンド(注釈2)で英国中のナショナル・トラスト(注釈3)に無料で入場できます。英国の滞在期間に限りがある駐在員ご家族にはもちろんのこと、このウェールズで家庭を築いた国際ファミリーにも、ナショナル・トラストは真の英国を楽しむ、最高の手段です。

なかには「トラスト巡りは老後の楽しみに・・・。」という方もいますが、いまナショナル・トラストがもっとも力を入れているのは、次世代へこの活動を引き継ぐこと。そのため、次世代となる子供たちがナショナル・トラストを大いに楽しめるように、様々なイベントを行っています。特に子供たちが自然や科学に興味を持つような実験的なワークショップや、英国の歴史を体験できるような再現イベント。さらにこれからの季節、ハローウィンにはお化け体験ハウス巡りツアーや、クリスマスには美しくデコレーションされたハウスでサンタさんが歓迎してくれるイベントなどなど。子供たちが一生の思い出として忘れられないような、素敵なイベントが目白押しです。

余談ですが、かつて補習校でお世話になった我が家の愚息も今や16歳。もはや親と一緒にトラスト巡りを楽しむような年齢ではありませんが、4,5歳から親に連れられ多くのトラスト巡りをしていましたので、いまでも例えば映画のワンシーンにトラストのプロパティが出てくれば、私よりも先にその場所を言い当てたり、かつて訪問したトラスト地にHENROで行ったりすると、「あぁ、懐かしいねぇ。何も変わっていないね。」と、小さい頃の記憶がまだあるのかと、こちらが少し驚いてしまうようなことも度々です。ですので、「子供が小さいから、まだ早いかも・・・。」ではなく、「子供が小さいうちに」ぜひ、英国の素晴らしさを体験させてあげてください。

注釈1:スコットランドには別組織となる「The National Trust for Scotland」がある。
注釈2:2010年9月現在。詳しくは英国ナショナル・トラストHPをご覧ください。www.nationaltrust.org.uk
注釈3:ナショナル・トラストの会員はスコットランドのプロパティも無料で入場可能。

・Dinefwr Park and Castles
http://www.nationaltrust.org.uk/main/w-dinefwrpark
・日本語による英国ナショナル・トラストガイド本
『図説・英国ナショナル・トラスト』(河出書房新社・刊)小野まり・著

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