岡崎さんのウェールズ滞在日記3

ウェールズ補習校 保護者 岡崎香折



3. マーガレットさんとの出会い

「Are you Kaori?! Welcome to Wales!!」と満面の笑顔で、しっかりとハグされて、一瞬、わたしはどう反応したらいいかとちょっとドギマギ。でも、ふわぁ~っと、安心感が心を満たすような気持ちになりました。イギリスのご挨拶はいつもこんな感じなのかしら?と思いつつ。

すでに陽平と葵の名前も覚えていて話しかけてくれ、夫には、家族が来てくれてよかったね!と言い、「さあ、座って!」と、大きいガラス戸が一面にあり、手入れが行き届いた庭が見えるきれいに整った部屋のソファをすすめてくれました。そして「何を飲む?」とわたしたちに尋ね、歌を口ずさみキッチンに行きました。紅茶とビスケットを手早く用意してきて、小ぶりのテーブルの下にあるもう一つのテーブルをさっと引き、その上に置いてくれました。その時、わたしは初めてこの‘ネストテーブル’という優れものの存在を知りました。(これは絶対日本に買って帰るべきものだわ、、、と、着いたばかりなのに、すでに帰国時の買い物にカウントしていました。その後早々に‘ネストテーブル’を購入し、それは現在も狭い我家で活躍してくれています)

この時生まれて初めて英国人の家の中にお邪魔したわけですが、突然の訪問者にうろたえることもなく、家の中に案内できる美しい部屋があることに、とにかく主婦としては敬服です。そしてご家族の写真がマントルピースの上に飾られ、写っているお孫さんたちも含めそれがなんとも美しく絵になっているのです。まずここで、あ~ヨーロッパのお宅だわぁ、、と感動。我が家もこんな風にきれいにできるのかしら?! なんて、この頃は淡い期待を持っていました。これは本当に驚いたことなのですが、どのお宅に突然伺っても、雑然としているということがないのです。なぜなのでしょうか??一説によると、なんでも物を棚にしまうので、棚を開けたらアウト、、、とかきいたことがありますが、、確かめたことはありません。ある近所のお宅に、ひょんなことから我が家のキッチンよ、と案内されたこともあるのですが、トースターすら上に置いていないのにはびっくりしました(わたしはといえば、突然の訪問者があると、家の中に上がってもらえる状態かを頭の中で素早くスキャンしていたものです。たまにお友達にきてもらって、はりきって家の片づけをするパターンは、今も昔も変わりません。。。)現地の方の家に、ちょっとした用で訪ねても、ちょっと入って、とか、初めて訪ねたお宅なのに、家中を案内されたりしたこともあったので、やはりいつでも「どうぞ入って」と顔を引きつらせずに言えるお部屋があると、現地の人と仲良くなるきっかけがもっとたくさんあったかも、と今更ながら思います。

さて、マーガレットさんは、わたしにもわかるような簡単な英語でいろいろ質問をし、またお嬢さんやお孫さんの話をしてくれました。一人娘のお嬢さんはご主人のお仕事の都合でアメリカに住んでいて、二人の女のお孫さんがいるとのことで、写真を見せながらとても楽しそうにおしゃべりしてくれました。このようなマーガレットさんの好印象は、わたしのウェールズへの好印象につながっていったのです。

マーガレットさんは、この頃76歳。ご主人は大分前に亡くなり、一人暮らし。いつもヒールのある靴をはき、スカートをはいて背筋を伸ばし、快活に笑い、通り沿いに面したコンサバトリー(もとはガラスで囲った温室という意味らしいが、くつろぐスペースになっていることが多い)で籐の椅子に座って本を読み、目が合うと大きく笑顔で手を振ってくれていました。ですから、マーガレットさんの姿をみかけると、いつも、なんとなくホッとしたものです。ある日、外で窓枠を磨いているので声をかけたら「ペンキ塗りをする前に、紙やすりできれいにしているのよ」と楽しそうに作業を続けているのです。76歳でペンキ塗りをするの??と、その時はびっくりしましたが、その後も英国人のDo It Yourselfの精神と腕前には驚かされること、そして感服すること度々でした。

ところで、夫とマーガレットさんとの出会いをご紹介しましょう。夫は12月の後半から一人でこのPorthcawlの家に住んでいました。Walesの12月は太陽が出ている時間も短く寒い時期でもあります。そんな中、夫はイギリス人が家族と共に楽しく過ごすクリスマスと元旦を一人で過ごさなくてはなりませんでした。そして暗いクリスマスイブ、ベルが鳴って出てみると、一切れのクリスマスケーキを持ったマーガレットさんが訪ねてくれていたそうなのです。このときが夫とマーガレットさんとの初対面でした。家のオーナーのMr. Parkerとマーガレットさんが知り合いで、Walesに来たばかりの夫が一人でクリスマスを過ごすことを知ったマーガレットさんがおすそわけの心遣いをしてくださったのです。夫は、この思いがけない来訪者とプレゼントがとても嬉しかったと、今でも言っています。ですからわたしたちが家に着いたら、まずはマーガレットさんにご挨拶に伺うことに決めていたのです。

わたしが今でもいいな、と感じるのは、英国人の親切の度合いがとても適度だということ。決して押し付けがましくもなく、さりげなく心配りするという感じの親切。このようなことも、とてもわたしにとっては居心地よく、英国を好きだと思う一面なのです。とにかくマーガレットさんによる最初のこの温かい受け入れが、これから新たに始まる生活を勇気付けてくれたことは間違いありません。

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