岡崎さんのウェールズ滞在日記7

ウェールズ補習校 保護者 岡崎香折

7.もうひとつの学校

 現地校が決まって、一安心。でも、日本の勉強はどうしようか、、、、と考えをめぐらしていました。そのとき息子は小学二年生の3月。まあ、しばらくは現地校に慣れることだけ考えて、サッカーもやりたいと言っているし、週末は家族みんなでゆっくりしよう!(いろいろ観光したいし♪)という方向に心は なびいていました。

Walesには、夫の会社の日本人赴任者も数十世帯住んでいて、あるお宅にお茶に呼んでいただきました。すると10人位の方が集まっていて自己紹介をしてくださいました。みなさんお子さんを補習校に行かせてらして、「いつから行くの?」と聞かれたので、「行かせるかどうか、ちょっと考え中なんです」と言うと、皆さんが『え~っ、行かせないの??』と一斉におっしゃったので、目を丸くしてしまいました。そして、Wales補習校のことを皆さんでいろいろ教えてくださいました。

① 子供たちは、週一回の補習校で日本語を話せることをとても喜んでいる。(現地校で英語漬けの日々なのでストレス発散の場)

② 子供たちは、放課後も友達と遊ぶ予定をたてて楽しみにしている。

③ とにかく、先生方が熱心で、作文指導など行き届いている。

④ 日本に帰国することを考えると、国語と算数だけはやっておかないと、将来、大変不安。
  でも補習校の宿題をやらせるのは結構大変。

⑤ 日本の行事などもいろいろあり(運動会もある!)、日本の文化にもふれられる。

⑥ 親がかかわることも多いが、それも結構楽しい。

などなどのお話を伺い、補習校を見学に行きました。

実は、赴任前にどこかで“Wales補習校の校長先生はすごい”ということを耳にしていました。どんなふうに何がすごいのかは具体的に聞けませんでしたが。初めてお会いした校長先生は勝手にふくらませていたイメージとはかけはなれていて、細身で、にこやかに、歯切れよく話をしてくださり、忙しそうにあちらこちらと動いていらっしゃいました。子供たちが気軽に校長先生に話しかける様子には、アットホームな感じの学校だと好感を持ちました。

集会室に入ったところで事務をしている方がいて、親や子供たちときさくに話をしています。それがソーン陽子さんでした。そして、部屋の一角に、スラッとした典型的なイギリス紳士という雰囲気の男性が、静かに足を組んで本を読み、時折目が合うとニコッとしてくれて、どなたなのかしら?と思っていました。すると誰かが、校長先生のご主人のリチャードさんよ、と教えてくれたのを覚えています。

和気あいあいとにぎやかな補習校を息子もとても気に入り、我が家もWales補習校に通わせていただくことになりました。二年生の終業式の日が最初の登校日だったのですが、100人以上もいるホールで息子が緊張して自己紹介をしていた姿を今でも思い出します。

 4月になり、新三年生として、息子は毎週土曜日にバスで補習校に通い始めました。日本人赴任者の子供がたくさんいたため、会社がバス会社と契約をし、BridgendからCardiffにある補習校まで送迎をしてもらえたので大変助かりました。子供の安全を考えて、家族当番制で、一人の親(たいてい母親)がバスに一緒に乗って点呼をとり安全を確認し、もう一人の親(たいてい父親)が、万が一に備えて車でバスの後ろについていくという、とてもよく考えられた協力体制ができていて、感心したものです。

 そして、子供が補習校に行っている間に、親はゆったり買い物や食事ができたというわけです。といっても、我が家には、5歳の娘がいたので、一年経って娘が補習校に入ったら、土曜日はのんびりできるわ~と思っていました。

 しかし、現実は結構思うようには運ばず、娘が小学校に入ったとき、夫に補習校の委員の役がまわってきて、夫は補習校に通う日々となりました。というと、残念、、、、という感じがしますが、実際には、補習校をよく知ることができ、ひとつのチャンスをいただいた、ということです。しかも、あの宇宙に行った毛利衛さんが、補習校の生徒に講演してくださるという話しが舞い込んできて、それを無事実現できたことは、大変嬉しい想い出として残っています。

 こうして、我が家では、娘も小学一年生から四年生の1月まで、息子は中学一年生の1月までの約5年間、ウェールズ補習校にはお世話になり、友達と共にたくさんのことを学んだり、経験したりすることができました。途中でロンドン近郊のWeybridgeに引っ越したため、補習校には通いきれず、Wimbledonにある日本の塾に通うことにしたのですが、補習校と塾では全く勉強の意味合いが異なるものなので、小学校の時代にWales補習校に通えたことは、本当に、日本の勉強のベースを作るとともに子供にとって心豊かな時間を送れることができ、深く感謝をしています。

 そして先日、Wales補習校が 第30回海外子女文芸作品コンクールで学校賞を受賞された と伺いました。財団の方によると、Wales補習校は世界中にある補習校の中でも、学校賞の常連であり、それは努力なくして得られるものではないとおっしゃっていました。子供を18年間育ててきて、育てるということは、本当に、小さなことの積み重ねだと、つくづく思います。ですから、学校賞の常連ということは、長きに渡り先生方が努力を重ねていらした日々の結果が形にあらわれたものなのだと思いました。子育ては、毎日毎日同じことの繰り返しをしているようですが、積み重ねによってしか産み出せないものもありますし、その中のひとこまが、子供の心の琴線をとらえて、将来の夢に結びつくこともあります。ですから、子供と向き合う生活はある意味、尊いことなのだ、と子育て終盤の今、感じています。

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