岡崎さんのウェールズ滞在日記9

岡崎さんのウェールズ滞在日記9

ウェールズ補習校 保護者

9.勉強嫌いのその後

 金曜日になると、補習校の宿題をやらなくてはなりません。毎日少しずつやっておけば、こんなに大変ではないのに!と毎週小言を言わなくてはなりません。
 どうにか、自分から勉強をするようにならないかと、近所の日本人のお姉さんにきてもらって、さりげなく勉強を一緒にしてもらったりもしました。が、その時だけでした。しかし、小学四年生の2学期になったとき、補習校の担任の先生との個人面談で「陽平君、変わりましたねぇ」と言われ、確かに、自分から宿題などをするようになっていました。何によってそうなったかは、明確ではないのですが、英語での授業にも慣れ、自信を少し持ってきた頃ではないかなと思います。本人に尋ねたところ、「別に急に変わってないよ。ただ、この頃から本を読み出しただけ。」とのこと。そういえば、コミック以外の本を自分で読むのが大嫌いな子で、なんとか読書の楽しさを教えたいと、『ハリーポッター』を日本語で読み聞かせをしたことがあります。二巻目の読み聞かせを途中までしたときに、わたしに読んでもらうのを待ちきれずに、自分で読み始めたのです。それからは、おもしろそうな本を補習校の図書館で借りるようにもなっていき、今では、英語、日本語問わず、読書は好きなようです。また、文字を書くことが大嫌いな息子が、毎週校長先生に赤ペンで直していただいたり、励ましていただいたりした俳句で、海外子女教育財団での賞をいただけたことなども、勉強を続けることによって得る喜びのひとつを知るきっかけになったと思います。しかも、校長先生からの封書で来たお知らせには、スペシャルな“おめでとう切手”が貼ってあって、思わず子供と共に笑ったのも想い出です。

 その後、中学一年の2月からWimbledonにある日本の塾に週1回通い、日本の高校受験に臨みました。我が家の方針は、週に5日通う現地校の勉強をまずきちんとやること、でした。塾に通う他のお子さんはとても優秀でやる気もあって、皆さん中学三年生になると現地校の後、週に3回塾に通って頑張っていました。息子はヴァイオリンもやっていて三足のわらじを履いている状況で、日本の勉強はさっぱりでしたが、最後の2ヶ月間猛勉強をした結果、なんとか希望をしていた高校に合格できました。
 息子は、将来自分がやりたい分野を小学生の頃から決めていて、8年たつ今も考えは変わらず、それに携われるように大学受験に向けて勉強をしました。といっても高校3年間で5教科7科目を皆にキャッチアップをして大学受験を突破するのは、普通の息子にはかなり厳しいものだったようです。(親は楽観的に、3年あれば何とかなる!といって、英国から日本に本帰国しました、、、)(定期テストでまずまずの成績をとっていても、復習を怠っていたために高3で痛い思いをし、復習は大事、センターを甘く見るな、結果は努力次第、などと妹に伝授している様子です。)
 息子の大学受験は親も子も手探り、そんな中、学校の様々な先生が声をかけ、アドバイスを下さり、支えてくださいました。これが、どんなにありがたかったか。とうとうセンターまで一ヶ月のある日、『努力していればいいことがあるんだなと思った』と久々に明るい顔で息子が話し始めました。帰り際、友人を職員室脇のベンチで勉強をしながら待っていると、数学の先生が「岡崎君か、頑張っているね」と声をかけてくれ通り過ぎたとのこと。すると、先生は戻っていらして、「きみは、一学期のときは、とんでもない答えを出していて大丈夫かと思ったけれど、二学期になって大分よくなってきた。」から始まり、息子が志望している大学の傾向や戦略、今は模試の結果で浪人生に負けていても最後の一ヶ月が勝負なのだから、絶対あきらめてはいけないことなどを説いてくださったとのこと。そして最後に、「ぼくは、頑張っている人は応援したくなるんだ。過去問と対策の問題集をすべてやるのは無理だから、どの問題をやればいいか印をつけてあげるから、明日持ってきなさい」と言ってくださったのだそうです。
“応援してくれている人がいる”というのは、結果が見えないものに突き進む中では、本当に元気を与えてもらえるものなのだと、改めて感じました。その頃親ができることといえば、心身の健康管理と資金の調達、笑顔でいること、くらいでしたので、感謝するばかりでした。

 そして春、息子は受験勉強から解き放たれ、やりたかった環境分野の勉強、管弦学部、野菜塾(サークル)にと生き生きと大学生活を送っています。志していた学校には振られましたが、『自分より努力した人がいたってことだ』と納得し、自分で選んだ大学、そして友人を大変気に入っている様子です。先日、将来の方向について教授に少し相談をしたら、1時間語ってくださり、自分も教授も昼休みがなくなった、、という話を息子がしていました。田口校長先生からいただいたメールに『第一希望に手が届かずとも、それは天命であったのだと信じています。何かそこに新たな人や学問との出会いが用意されているはずです。受験は単なる勝ち負けの結果なのではなく、新しい可能性へのスタートなのだと思います。』とありましたが、息子の様子を見ていると本当におっしゃる通りだと思う昨今です。

 受験を終えて今更ながら思うのは、基礎がいかに大事か、です。基礎の読み書き計算です。そして、目標を持って努力し続けること。息子から「日本に帰ってきて大学受験をして良かったよ。“努力をするってこと”を知ったから。」という言葉を聞いたときは、ほっとしました。最も厳しい道を選ばせてしまったかなと思っていたので。そしてその言葉を聞いていた娘が「そう?わたしはね、日本に帰ってきて知ったのは、“あきらめるってこと”。」と言ったので、爆笑してしまいましたが、娘にとっては、様々な納得のいかないことを乗り越えなくてはいけない中学校三年間でした。そしてすでに娘も大学受験へと発破をかけられ始めています。三年後、成長をしている娘に会えることを楽しみに共に乗り切らなくては。

 今になると、読み聞かせをしていた頃がなんとも懐かしいです。もっと、もっと、本を読んであげればよかったなぁとか、あんなに怒らなくてもよかったなぁ、などと思い返します。今、小さいお子さんをお持ちの方は、いろいろ悩みもあるかもしれません。でも、その時代にしかできないことを、存分にお子さんと一緒に楽しんでくださいね♪こどもは、確実に大きくなっていきますから。

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