補習校便り 2009年11月、12月

書き写し(視写)の効果
田口知子

 前回のコーヒーモーニングで、書き写しのメリットについて質問が出ました。書き写しは、思考力を要しない単純作業のようで、実は大きな学習効果があります。二年前に、本校で講演をして下さった元NHKアナウンサーの末利光氏も、おっしゃっていました。「面倒に思われがちな作業だが、書き写しの効果は非常に大きい。文学作品でも何でよいから、とにかく良い文章を原稿用紙に書き写すと、とても良い勉強になる。まず文章の構成方法が分かるので、構成力が身につく、また良い文章が頭に入る。立派な文章は赤線を引いて、覚えていくとよい。」末氏は小1の時から、学校でよく書き写しをさせられていたそうです。文章修行に、有名作家の小説を原稿用紙に書き写したという作家の話も聞きます。文章の長さや句読点の打ち所や的確な言葉使いを覚えることができるのだそうです。

 補習校の子供たちにとっても、書き写しは文章のリズムや言葉の表現を感覚的に身につけていくことができる点で、意義があります。教科書の教材の中で、気に入った箇所を選んで書き写すようにすれば、印象的な表現を意識して読むようになるので、読み方も変わってくるでしょう。スピードがついてくれば、一字一字ではなく、ひとまとまりの言葉として書けるようになるので、確実に読みの力が伸びます。国語は、ワークの問題を数多く解けば、力がつくというものではありません。国語が苦手な中学生が、天声人語をこつこつ書き写していく内に、国語の点数が伸びたという例もあります。読むことは書くこと、書くことは読むことにつながります。

 このように書き写しは、文章表現の技法や表記のルールや原稿用紙の使い方を覚えることができ、書く力と読む力を同時に伸ばしてくれます。また、字を正しくきれいに書く訓練にもなります。新しい漢字や語彙は、実際に書かなければ定着しません。漢字の細かい部分や送り仮名をよく見て、書き写すわけですから、集中力が鍛えられます。遊んだ後、すぐに学習に気持ちが向かない時は、書き写しから始めてみてはどうでしょうか。気持ちが机の上に集中し、勉強のウォーミングアップになります。そして持続力も強化されます。学習に集中し、ねばり強くがんばれる力は、学力を伸ばす原動力です。

時間は、一回10分。長く続ける必要はありません。小学生も中学生もます目のノートか、原稿用紙を使うとよいです。毎日は無理でも、曜日を決めるなどして、定期的に決まった時間に取り組んでみてはどうでしょう。10分でかける字数を記録すれば、速さの伸びが目に見えて励みになります。工夫して取り組んでみて下さい。(2009 11月7日)

作文を書くことのメリット
田口知子

 アメリカの大学では、国語(英語)の授業があるそうです。アメリカの全ての大学がそうなのかどうか、わかりませんが、日本の大学で、国語の授業があるという話は、あまり聞いたことがないので、この話は意外でした。アメリカでは、それだけ論文やレポートを書く力が重視されるからでしょうか。正しい文法、的確な表現で、論理的に要点を伝えるためには、しっかりとした言葉の力が求められます。国語力は、日常的に、会話したり、文章を読んだり書いたりする中で、なんとなく力がついていくような気がしますが、話す・聞く力も、読む・書く力も、使える力として伸ばしていくためには、系統立てて学習し訓練していくことが必要です。アメリカでは大学レベルでも、言葉の訓練がついてまわるというのは、とても興味深いことです。

 国語は、全ての教科の基本です。言葉を通じて、新しい事柄を理解していくわけですから、国語力は学力の土台を作るといえます。そして国語力は、読むことで基礎力を伸ばし、書くことで定着します。

 では、書くことで具体的には、どういう力が鍛えられるのでしょうか。それはまず、考える力です。まとまった文章を書くためには、何を伝えたいのか、言いたいことを明確にし、思考を整理しなければいけません。次にそれを分かりやすく伝えるためには、どんな構成にすればよいか構成を考えなければいけません。ですから、書くことは、この上もない知的活動なのです。何よりも言葉の力の基礎となる漢字や語彙は、実際に文章の中で使ってみることで、習得していくことができます。また、一つの作文を完成させるためには、時間を要しますから、忍耐力も鍛えられます。学力は、こうしたいろいろな側面から、伸びていくものですから、作文を書くことは、とても大切な学習活動なのです。 さて、本校で力を入れる作文指導月間も、終わりに近づいてきました。題材探しから始まり、少しずつ作文の形へと書き進めてきましたが、ここまで無理なくたどり着けましたでしょうか。

 今年度は、「家族」をテーマに取り上げました。何人かの作文の下書きを読ませてもらいましたが、子供たちは、作文に書くことで、家族の愛情を感じ、家族のすばらしいところを再発見できたようです。書くことは、新しい自分と出会わせてくれます。最初はぼやっとした「気持ち」でも、それを言葉にしていくうちに、次第にそれが形になっていきます。書くことは、自分の気持ちと向き合うことにつながります。書いていくうちに、そうだ、自分はこういうことが伝えたかったのだと、気がつく場合もあります。

書くことは、周りの人の良さに気づく心の眼や感性も磨いてくれます。今回の作文を書くことで、周りへの感謝の気持ちや優しい心を引き出すことができたら、こんなにうれしいことはありません。ご家族の皆様にとっては、お子様の心の内を知ることができる大切な作文です。私も一人一人の作文の完成を楽しみにしています。(2009 12月5日)

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