補習校便り 2010年10月

補習校だより 2010年10月

ジムさん、ありがとう

田口知子

 ウィットチャーチアッパーハイスクールには、ケアテイカーさんが二人います。ファーストケアテイカーのジムさんとは、補習校がローワースクールにいた時からのおつきあいです。私たちがアッパースクールに引っ越すのと同時期に、ジムさんも異動して来ましたので、17年間、お世話になりました。そのジムさんが九月末で定年退職されるので、先週の朝会でお礼の贈呈式を行いました。

 前日、電話で朝会のことを伝えると、「Oh・・」と少しとまどいもあるような様子に、子供たちにお礼を言う場を下さいとお願いをして、電話を切りました。

 朝の開錠はもう一人のケアテイカーさんと交代制です。先週は、ちょうどジムさんの番でした。ここで、朝のケアテイカーさんの仕事について少しご説明いたしますと、まず八時半には教室の鍵が開いています。しかし、朝の仕事は、これだけではありません。平日は、正門から入った所に、バリヤーが取り付けられていて、自由に車が入れないようになっているのですが、土曜日は、これをはずしておいてくれます。前夜、コモンルームでパーティーがあって散らかっていたからと、六時半から掃除をしてくださっていたこともありました。片付けや掃除を一緒にしようとすると、それは自分の仕事だからと、いつも申し訳なさそうな顔をします。当番席の三つのテーブルも、いつも並べておいてくれます。

 話を戻しましょう。先週、私が学校に着いた時、ジムさんが通りかかりました。朝会に来てくださいねと念押ししましたら、既に目がうるうるしていて、私も胸がいっぱいになりました。気後れする部分もあったのでしょうか。朝会が始まってもなかなか姿が見えないので、コモンルームのすぐ横のケアテイカーさんの部屋まで、お迎えに行きました。朝会の最後にジムさんをご紹介するまで、松井先生が、ジムさんの横で、通訳をしてくださいました。子供たちに「みんなが一番お世話になっている人」と言っても、最初はピンとこなかったようです。ケアテイカーの仕事について説明をした後、みんなでサンキューと言って、プレゼントをお渡ししました。すると、「開けてもいいかな」とイギリス式に、すぐその場で箱を開けて、中のこけしをみんなに見せてくださいました。そして、全員で記念撮影。子供たちとの記念撮影は、ジムさんにも喜んでもらえたようです。

 スポーツクラブの後、施錠にやってきたジムさんを見つけて、最後に残っていた人たちみんなで、もう一度記念撮影をしました。思えば、全員帰宅してがらんとした放課後、施錠に来たジムさんとよく世間話をしたものです。最後は決まって「楽しい週末を」。それは、一日が無事に終わった安堵感を共有できるひとときだったように思います。ティーンエージャーの時にハンガリーから逃れて来た話(西欧史を見ればご苦労が推測できます)を少しだけ聞いたことがあります。犬好きで、運動場でよく、飼い犬を遊ばせていました。

 「日本人はいつもきれいに教室を使う」と言って信頼し、補習校の子供たちのことをとても好意的に見てくれていました。ガラスを割った時には、その生徒を連れて謝りに行ったこともありました。お陰で、どんな時も補習校サイドで、融通をきかせてくれました。先週は今までで一番なごりおしい放課後でした。「これからは、土日の仕事から解放される、自由だ。」とうれしそうに手を振りながら去っていくジムさんに、私はもう一度心の底から、ありがとうと言いました。  (2010年10月2日)

文集作文の題材探し

田口知子

 今年度の学校文集のテーマは、「いちばん」です。これからの二ヶ月間は、作文指導強化月間となります。教科書学習と並行して、作文の題材探し、構成、下書き、手直し、清書と、無理なく作文が書けるように、段階的に取り組んでいきます。担任への提出締め切りは、12月4日です。現地校のテストや一時帰国などの予定がある人は、余裕を持って計画的に準備を進めていきましょう。

 作文学習の最初のポイントは、題材探しです。「いちばん」というテーマで、どんなことについて書けそうか、時間をとってクラスの中で一緒に考えます。友達の考えを聞いたり、先生の話を聞いたりすることで、ヒントが得られるはずです。その後、さらに一週間、家でも考えて、一番書きたいことを選びます。この時、ご家庭にお願いしたい支援は、親子の会話です。作文の学習は、机に座ってかしこまってやるものとは限りません。夕食を食べながらでも、歩きながらでもできます。「こんなことがあったね、あんなこともあったね。」と、自由に話をすることが効果的です。兄弟がいる場合は、みんなで一緒に取り組んでみてください。作文を書く動機づけと、幅広くテーマをとらえ、題材を見つける目を広げることが、ここでのねらいです。

 では「いちばん」のテーマで、どんなことが書けそうでしょうか。例えば、自分が一番になったこと、一番好き(苦手)なこと/もの、一番楽しかったことやうれしかったこと、くやしかったこと、一番大きな失敗、好きな人やアニメのナンバーワン、自分がほしい金メダルなど。高学年でなれば、自分が一番大切にしていること、一番尊敬する人、一番好きな場所や時間、一番好きな本や番組、自分が一番変わったと思う体験、日本とイギリスの一番大きな違い(一番好きな点と嫌いな点)、あるいはナンバーワンとオンリーワンについての意見文も書けそうです。

 先週、高学年のクラスで、テーマについて発表したところ、一斉に「今までで一番難しい」という声があがったとか。よいことです。何について書くか、これからおおいに考えて下さい。どんな題材が登場するか、楽しみにしています。それに、既に題材が一つ登場しているではありませんか。それは「今までで一番難しいテーマの作文」について作文を仕上げる過程を書くのです。アイデアは、言葉に出すことで広がります。自分の思ったことや感じたことを言葉に出して、周りの人たちに伝えてみて下さい。作文を書くということは、周りとのコミュニケーションでもあり、自分との対話です。   (2010年10月9日)

語彙を増やすために

田口知子

 先週のコーヒーモーニングは、幼児部と低学年のお母様方がお集まり下さいました。聞き慣れない言葉につまずいて、学級文庫がなかなか読み進められない、俳句はいつも「きれいだな」で終わってしまうといった話から始まって、語彙力をどう伸ばすかが、話題の中心になりました。

 語彙を豊かにするには、主体的且つ意識的に学んでいくことが必要です。言葉について課題を設定して調べてみたり、実際に文章の中で使ってみたりすることが効果的です。擬態語や擬音語を使うことに、はまっているお子さんの話もお聞きました。日頃から意識して言葉を選ぶようにできるとよいと思います。語彙力は、言葉集めや動作化、文章の読解や作文書きなど、あらゆる学習活動が語彙力の向上につながります。地道に努力を続けましょう。

 二つ目の話題は、読書についてです。読書の習慣は、すぐに身につくものではありません。幼児期からの読み聞かせやお家の人が新聞や本を読んでいる姿を見て、読書への関心が育ちます。日曜日の朝、20分だけテレビをつけるのをやめて、家庭読書の時間を確保されるのも、一つの方法です。読書意欲は、自然に育つものではないので、マンガやライトノベルをきっかけにして、親子でおもしろいと思える本を選び、読書に楽しみを見出していけるとよいと思います。読後の感想を書くことが負担である場合は、ご家庭で記録方法を工夫してみてください。面倒でも本の題名は、書き残しておくと、後でどんな本を読んだか振り返ることができるので、貴重な記録になります。

 最後に俳句作りについて。その週のテーマを頭において、朝の登校途中で空をながめるなど、良いアイデアだと思いました。俳句作りは、難しく考えないで、美しい風景やおもしろい風景に出会ったら、親子で足をとめて感動に浸ったり、一緒におもしろがってみたりすることが、俳句作りのスタートです。心が動いたことを言葉に表現するのは、次のステップになります。ここでは、親子の協同作業が生きてきます。夕焼けが何色か、雲がどんなふうに動いているか、言葉を引き出すために質問してあげるとよいです。言葉をいろいろ出し合って、ぴたっとくる言葉を子供に選ばせていくようにすれば、語彙の幅が広がります。また、兄弟同士でアイデアを交換し合ったり、補習校だよりに載った友達の作品を参考にしたりするのも、効果的です。

 コーヒーモーニングで、皆さんのお話をお聞きしていと、私自身、立ち止まって考える貴重な機会になります。それが学習指導のヒントにつながることもあり、大変参考になります。これからもよろしくお願い致します。   (2010年10月23日)

子供時代の遊び

田口知子

 先週は、あいにくの雨で、放課後のスポーツクラブが中止になりました。そのため、いつもなら、すぐにがらんとなるコモンルームが、先週は子供や大人たちの遊びやおしゃべりのサロンに様変わりしました。子供たちは、いつでもどこでも、時間のある限り、遊びたがるものですが、特に土曜日は友達とさよならするのが、本当になごりおしいようです。
 サマースクールでは、放課後、スポーツホールで親子でゲームとドッジビーを楽しみました。中休みは子供たち全員で、中庭でケイドロ(地域によってドロケイともいうようです)をしました。始まりはこんな具合でした。休み時間に集合した子供たちの目が「何して遊ぶの」と期待で輝いているのを見て、私がケイドロを提案すると、「それがいい。」すぐに決まりました。班別に、警察と泥棒に分かれて、ゲーム開始です。警察チームは、赤いハチマキをします。しばらくすると、「安全な逃げ場所が必要だよ。」と高学年が提案し、中庭の真ん中にある石のオブジェにタッチしていたらつかまらない、というルールを作りました。しばらくして、今度は別の生徒が肩で息をしながら、「警察が多すぎだよ。すぐにつかまってしまうもの。」そこで、警察は五人に限定することになりました。そして、再スタートです。最初だけ先生が声かけしましたが、後は子供たちだけで、休み時間になるたびに飽きることなく、ケイドロを続けていました。

 小中学生が一緒に遊ぶことで、上級生はリーダーシップを発揮し、下級生はあんな先輩になりたいと憧れを抱きます。集団での遊びを通して、子供たちは人間関係を学んでいきます。また、子供たち自身で遊び方やルールを考え出していく点にも、感心しました。遊びは知力と体力の両方を伸ばしてくれます。子供時代は、思う存分、友達と外遊びをしてほしいと思います。

 本来、子供たちは、みんなで元気に走り回って遊ぶことが大好きです。私が子供の頃は、缶けりに熱中しました。シンプルな遊びですが、隠れ場所や作戦を考え、かなり盛り上がりました。一時期「忍者赤影ごっこ」にはまったこともありました。当時、子供たちに人気のあったテレビ番組をまねして、赤影、青影・・のように配役を決め、そろいのメモ帳で身分証明書まで作って、持ち歩いていたほどです。暗くなるまで遊んで帰り、心配した母親からこっぴどく怒られたこともありました。

 今週から冬時間になります。スポーツクラブができる日も、残り少なくなってきました。保護者の皆さんも、お子さんと一緒に、体を動かしませんか。安全の目配りにも、ひき続きご協力のほど、よろしくお願い致します。
(2010年10月30日)

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