補習校便り 2011年1月

補習校だより 2011年1月

海外子女文芸作品コンクール入選作品集を読んで

         田口知子

 海外子女文芸作品コンクールの入選作品集(学校用)が届きました。(入選者の賞状と盾と作品集は、まだです。)巻末の資料を見ると、俳句の応募総数は16452、短歌は7397、作文は3516、詩は3035でした。俳句と短歌は一人三つずつ応募できますので、かなりの数になります。入選作品数は、俳句部門は、優秀作以上が71句に佳作が129句、短歌部門は、優秀作以上が41首に佳作が59首です。数を見て、改めて入選するのは大変なことだと分かります。

 詩の部門の優秀作に、スコットランド補習校の小3小宮もあさんの作品「どっち」が掲載されていました。

 選者で詩人の長田(おさだ)弘氏が、総評に次のようなことを書かれていました。

 「日本語の世界とはまったく異なる言葉の世界の中で、日々の時間を過ごし、小さな経験を一つひとつ積み重ねてゆく。そうした自分にとってのいちばんの心のよりどころとなるのは、みんなにとってまず家族なんだということ。みんなの詩を読んで、いつも真っ先に感じることはそのことです。大洋の中をゆく家族という船に乗って、風を感じ、遠くに目を凝らし、揺れを受け止め、いつも身近にあって、ふだんにやさしく、またするどく、時にはうるさく、みんなの有り方、感じ方を質す(ただす)、「問う人」「伝える人」「ねがう人」としてのお母さんの存在です。」そして総評の最後にこのように言っています。「人と人をつなぐ日々のコミュニケーションで重んじなければいけないのは、何といっても言葉です。しかし、言葉以上に重んじなければいけない、大事なものがあります。それはまだどうしても言葉にできない、言葉にならない心の思いです。そうした言葉にできない、言葉にならない心の思いを入れられる容器をつくる。詩をつくるというのは、そうした心の容器をつくるということです。」

 小宮もあさんの詩は、お母さんの言葉が題材になっています。きっと、日頃からお母さんとたくさん会話をしているのでしょう。そして小宮さんの心の容器は、お母さんとの言葉のキャッチボールによって、育ってきたのだろうと思います。

 海外において日本の勉強をがんばっていくためには、家族の励ましが、一番の支えになります。そして学校では教師が、子供の学習を後押しします。言葉が持つ力は大きいです。これからも子供の心に響く言葉を届けていきましょう。(2011年1月15日)

読書意欲を育てるために

         田口知子

 海外子女文芸作品コンクールの入選作品集で、詩(優秀作)「本の洪水」を読みました。
 作者がお母さんと競争のように本を読む姿が、目に浮かびました。きっと子供の頃から、お母さんが楽しそうに本を読んでいる姿を見て、育ってきたのでしょう。そして、本の読み聞かせもたくさんしてもらっていたのでしょう。

 国語の学習には、聞く、話す、読む、書くの四つの分野があります。言葉の力を身につける上で、最初に習うのが聞くことです。言葉のシャワーにどれだけ触れているかが子供の言葉の力を左右します。かといってテレビづけにすればよいというものではありません。テレビからの情報は一方通行です。温かい心を言葉にのせて伝えることは、テレビにはできません。その語彙がどんなふうに使われて、どんな意味を持っているのか、子供は、親子のコミュニケーションを通して理解し、言葉の世界を広げていきます。

 そこで、効果があるのが本の読み聞かせです。子供は、お話が大好きです。わくわくしたり、はらはらしたり、想像の世界に遊ぶのは、本当に楽しいものです。

 先週、入学を希望する年長幼児に体験授業を行い、最後に、読み聞かせをしました。「そらまめくんのベッド」と「すてきな三にんぐみ」の二冊を見せて、どちらを読んでほしいか、聞いたところ、後者に決まりました。この本は、図書室を整理した時に、お母様方から子供たちに人気があるとお聞きしていた本の中の一冊です。えもの、きもをつぶす、ほうせき、すてごやみなしご・・聞き慣れない言葉が出てきますが、時には説明を加えながら読んであげると、最後まで一生懸命聞いていました。

 補習校では、毎週、一年生のクラスで一日の終わりに10分程度の読み聞かせを続けています。お父様、お母様が順番でいろいろな本を手に、教室に来てくださいます。おかげ様で本の選択の幅が広がり、いろいろな人の声や読み方を体験する良い機会になっています。学校での読み聞かせは、お友達や先生と一緒に共通の体験を重ねていける点も貴重です。みんなで一緒に学習しているという温かな学級意識を育てることができます。

 読み聞かせは子供たちへの愛情を伝える言葉の贈り物です。耳から入る言葉の世界で、子供たちはいろいろな言葉と出会い、楽しみながら言葉の学習をしていくことができます。一人の児童作家が言っています。「生き生きと受け答えしてくれる大人に、じかに話しかけられたことのない子供は、ちゃんとした話し方を身につけることはないでしょう。尋ねても答えてももらえない子供は、尋ねることをしなくなるでしょう。そういう子供は、ものごとへの好奇心を失っていくでしょう。そして、お話をしてもらったり、読み聞かせをしてもらったりすることのない子供は、本が読めるようになりたいとも思わなくなるでしょう。」

 子供たちに良き読書習慣を身につけさせるには、大人が読書のおもしろさを伝えていくことが不可欠です。(2011年1月22日)

五感を働かせて

         田口知子

 先週は、担任の急な出張に伴い小4で詩を書く授業を一時間担当しました。教科書の詩を読む学習に続く発展学習です。「詩はあまり書いたことがない、書き方が分からない」という中で、タイミング良くあのねちょうに詩を書いてきた児童がいたので、どのようにして詩を書いたのか、発表してもらいました。その方法は、現地校では「スパイダーネスト」といっていると、別の児童が教えてくれました。私が「マッピング」ともいうと説明すると、また別の児童が現地校で習ったと言います。真ん中にテーマを書いて、そこから思いつく言葉をくもの巣のように、どんどんメモしていく方法です。今週の俳句のテーマ「書き初め」を取り上げると、白、黒、半紙、すみ、よごれた手、筆、深呼吸など、たくさんの言葉が出てきました。それらの言葉を使って、一人一文ずつ作ってつなげると、合作で詩が一つできました。

 次に、海外子女文芸コンクールの過去の作品集に掲載されていた詩を二つ、紹介しました。一つ目は、上海日本人学校の小4児童の作品です。「ワイワイがやがや、パンッパンッパンッ、プップップップー、バーンサラサラサラサラ、カランカランカラン、チャリンチャリン、ガーンドドドドドド、ザーザー、ガラカラガラガラ、ズー、チーンチーン、ジャー、キャー、サラサラサラサラ、ドンドンドン、ザッザッザッザッ、カラカラカラ、上海ってにぎやかだ」巻物のように丸めた紙を一行ずつ広げて見せながら、みんなで音読した後、題名を予想しました。

作者がつけた題名は「にぎやかだ」です。音だけで詩ができている点が新鮮です。二つ目は、まず題名を紹介。「にじいろのうんち」予想通り聞いただけで大爆笑。同じ上海日本人学校小4児童の作品です。「げんかんのまえにいた おおきなかたつむり。たべたものと おなじいろのうんちをする。きゅうりをたべたら きゅうりいろのうんち。にんじんをたべたら にんじんいろのうんち。にじいろのペロペロキャンディーをたべたら、にじいろのうんちをするのかな」うんちなんてことは、書くものではないと二人の児童が言うので「でも、これ日本放送協会賞なんだよ。」すると、どういう人が選んでいるのか、と顔を見合わせて笑っています。

ここで「見方がおもしろいから、これはいい作品だ。」と反対意見が登場。選者の詩人長田(おさだ)弘氏もコメントに書いていました。「遠い昔の怪獣だけではありません。この世の不思議な物、とんでもない物、なぞに満ちた物は、いつでも目の前にあります。当たり前の物、ありふれた物、どこにでもある物、不思議でも何でもない物が、本当は全部その逆。ありふれた物なんてない、不思議でも何でもない物なんてない、どこにでもいるかたつむりが、本当はどんな不思議な生き物であるか、この詩は鮮やかに語っています。」

 詩や俳句を書く時に、音や色など五感を働かせれば、おもしろい発見ができます。また、子供たちは、作文や詩にはみっともないことや道徳的でないことは、書いてはいけないと思いがちです。「書いてはいけないことは一つだけ。読んだ人が悪口を書かれたようで、嫌な気持ちになったり心が傷つけられたりしないこと。それ以外は何を書いてもよい」という私の言葉が、子供たちの心に届いていてほしいです。これから子供たちがどんな詩を書いてくるか、楽しみです。ご家庭でも自由に詩と取り組んでみてください。(2011年1月29日)

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