補習校便り 2011年7月

補習校だより 2011年7月

言葉の力を磨

田口知子

 先月、「語彙・読解力検定」の第一回試験が高校、大学等の準会場及び公開会場で、行われました。この検定試験は、朝日新聞社とベネッセコーポレーションが共同実施するもので、今年度は準2級(中学生、高校生レベル)2級(高校生、大学生)準1級(大学生、社会人)の三つの級でスタートし、他の級は来年度以降に、順次実施されるそうです。出題領域は、①辞書語彙、②新聞語彙(社会、科学技術、医療・生活、文化の4分野)、③新聞のコラムや社説、書評などの記事を使った読解の三つです。ことばは、コミュニケーションの基礎です。周りからの情報を正しく理解し、自分の思いや考えを分かりやすく他者に伝えるには、語彙や表現をたくさん知っているほど有利です。「語彙・読解力検定」開始にあたり、作家のあさのあつこ氏が、次のようなメッセージを寄せていました。

 「ことばを知り語彙力が向上すれば、国語の力がつく。それだけではなく、閉そく感でうめいている時、本やことばで前へ進めることがある。」あさの氏は、子ども時代、書くことで劣等感や寂しさなどを紛らわせていて、中学生の時に海外ミステリーに出会い、物語のおもしろさを知ったそうです。「物語やことばは、知らない世界を教えてくれる、私だけの世界を紡ぐことができる、それが衝撃だった。若い人は、自分の思いをことばで伝えられると信じてほしい。大人は、子どもに生きたことばを浴びせてほしい。そうすれば、子どものことばはもっと豊かになる。上から目線ではない対等な会話が大切だ。」例えば、お母さんから「きれいな夕日だね。茜色だよ。」と聞けば、ことばの後ろに思い出が詰まってきます。「ステキですね。それだけでも豊かな時間だと思う。」と述べていました。
 あさの氏のメッセージを読んで、子どものことばの力を伸ばすには、周りからの働きかけが大切であると、改めて強く思いました。教室での教師のことば、家庭での保護者のことばは、どうでしょう。子供に対して、きちんとしたことばで、話しかけているか、私も時々振り返ってみなければと思いました。ことばを豊かにし、ことばの感覚を磨くには、日頃からそのことを意識して努力することが必要です。国語の教科書には精選された読み物が掲載され、言語事項がよくまとめられているので、大人が読んでも新鮮でおもしろいと思います。子どもと一緒に学ぶ気持ちを持ち続けていたいものです。そして、子供の話は興味を持って聞くことが大切です。忙しいとつい「あとで」と言いそうになるので、要注意です。(2011年7月2日)

国語の教科の目的

田口知子

 国語という教科は、国語力を身につけるためにあります。しかし、国語力とはどのような力のことをいうのでしょうか。語彙力、漢字力、作文力、読解力、発表力・・全てを総合的に含む力のことでしょうか。これについて、日本語学者の金田一穂氏がとても分かりやすく答えています。それは「言語能力」と「コミュニケーション力」です。発音、語彙、文法などを駆使して、自分の考えを表現でき、言葉で語られたものを理解できる力を言語能力といいます。しかし、どんなに表現と理解ができても、言葉とは相手と伝え合うことによってこそ、成立するものなので、もう一つ大切になるのが「コミュニケーション能力」です。つまり言語能力をベースにして、自分を伝える能力のことです。

 言語能力は、何もしないで自然に身につくものではありません。日常生活に必要な生活語彙は、日本語環境で生活していれば、自然に身についていきますが、「話す・聞く」「読む」「書く」の三領域の力を伸ばすためには、勉強として学習訓練を積み重ねていくことが必要です。国語の教科はこうした三領域を通して、「伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項(古典や言葉のきまりや漢字、書写などの言語領域)」を学習する教科です。言語能力の基礎となる漢字や文法は、「暗記」の部分です。時間をかけて覚えるしかありません。漢字は、実際に手で書いて練習した時間がものを言います。文法は、毎週、あのねちょうや日記作文を書いて、主語述語、助詞、文末表現などを意識して使う練習をしなければ定着しません。漢字はテストが終わったらすぐに忘れてしまうかもしれませんが、それでもよいのです。海外では、日本のように漢字を目にする機会が少なく、平日子供たちは英語で勉強しています。時間をかけて取り組んだ成果が、すぐに目に見えなくても、あせる必要は全くありません。毎週、自主的に間違った漢字を五回ずつ練習してくる生徒がいます。大切なのは、こうした反復練習を続ける努力です。結果的に、学業に必要な根気強さや勉強ぐせをつけてくれます。

  国語は、算数のように新しい知識を積み重ねることで力を伸ばす教科ではなく、同じ学習内容を繰り返す点が他の教科と異なります。小学校で取り組んだ「本の帯作り」や「新聞作り」が、中学の教科書に再び登場したりします。同じ分野の学習を、質と量を増やしながら、力を伸ばしていくのが国語の教科です。ともすると、国語の勉強はいつも同じような学習活動を繰り返していて、新鮮味に欠けるかもしれません。学習が新鮮に感じられるためには、新しい発見が必要です。文章の読み取りで、今まで気づかなかったことを知った時の驚き、発表や作文が、今までよりも上手にできるようになったと感じられた時の喜び。こうした体験が、学習意欲につながります。そのためには、子どもとより多く対話し感動を共有し、そしてうんとほめてあげることです。

 補習校の子供たちは、現地校と補習校の両方の勉強をかけもちしています。補習校での授業時数も、限られています。補習校の勉強は、短い時間で効率よくできるように、手助けしてあげることが必要です。例えば、ご家庭で漢字ミニテストを10問作ってあげて、あき時間にやらせてみるとか、漢字の覚え方をアドバイスしてあげるといったことです。小4で習う「健」と「建」、小3で「動」小4で「働」をまちがえていたら、人の体が元気で健康、人が動くから働く、と意味づけてあげます。先日小5で銅の漢字を習った時は、同が「やわらかくてつき通しやすい」ことを基に、ついでに筒、洞、胴の三つを(水筒、洞窟、胴回り)をクイズ式に紹介してみました。漢字の成り立ちや仲間の漢字を知ることで、漢字に興味がわき、単調な漢字練習に変化がつきます。あの手この手で、国語学習への意欲や興味を引き出していってあげましょう。(2011年7月9日)


国語力を伸ばすには

田口知子

 日本語学者の金田一秀穂氏が国語の勉強について述べていました。「国語とは、簡単なようで実は最も難しい科目かもしれない。得意な人は、勉強しなくても点がとれる。でも、苦手な人はどこから手をつければいいかわからない。読み書きくらいならできるのに、いや読み書きに困らないからこそ、勉強方法がわからない。国語という教科には、そんなやっかいさが潜んでいる。」国語の授業では、理科の教科書のように、「事実と論理」のみで構成されたような文章は、あまり扱われません。しかし言語能力を磨いていくには、これが重要だと金田一氏は言います。小学生に作文を書かせてみると、印象ばかりを書いてしまいます。中高生になっても同じで、美しい文章や感受性豊かな文章を書けることが、国語力の証のようになっています。しかし言葉にとって大切なのは、見た目の美しさではなく、「正しさ」であり、国語力を高めるには、情緒を切り捨て、事実と論理だけで文章を組み立てていくトレーニングをもっとやってよいのではないかと提案していました。私も同感です。

 先日、小5で「生き物は円柱形」の説明文を学習しました。学習目標は、構成をとらえ、要旨をまとめることです。11の段落を、初め、中の1、中の2、終わりの四つに分ける際に、初めと終わりの区切り方について、意見が割れ、討議の最後に、一人の児童から、「こういう考え方もできるし、どちらが間違いとはいえない」と理由づけされた意見が出て、読みの手ごたえを感じました。ところが、要旨をまとめる学習活動は、一様に口をそろえて「好きじゃない」と言います。「生き物の多様さを知ることはとてもおもしろい。それと同時に、多様なものの中から共通性を見出し、なぜ同じなのかを考えることも実ににおもしろい。」と、筆者が考える「おもしろいこと」は並列で二つ書かれています。「おもしろい」をキーワードとして確認していても、これらを両方とも落とさずに要旨にもりこむには、助言が必要でした。説明文の学習では、筆者の考え(要旨まとめ)と書き方の工夫(構成と文章分析)の徹底理解を柱として、教科書の説明文を一つ一つ単独に読むのではなく、どんな教材にも適用できる共通した読みの訓練を続けていくことが必要です。

 さて、もうすぐ夏休みです。夏休みは家庭教育の場となります。規則正しく学習することが、二学期からの学習効果に直結します。補習校からの宿題に加え夏休み用の自主学習ノートを一冊用意してみてはどうでしょう。

 自主学習は例えば

  • 漢字を毎日練習する。熟語で書く。
  • 教科書の文章を書き写しする。
  • 来学期学習する単元などから、毎日新しい語句を集めて意味調べや短文作りをする。
  • 教科書の文章がすらすら読めるまで、何回も音読練習をする。音読記録(回数や保護者の得点や読み終えるのにかかった時間)を残していくとよい。
  • 日記、高学年では、新聞のコラムの要点や印象に残った写真を切り抜いて感想や意見を書く。

 子供自身、努力と上達が目に見えることがはりあいになりますので、内容を工夫してみて下さい。自主学習ノートに取り組んだら、休み明けに担任に提出してください。努力を評価します。高学年では、自由研究的な宿題が出るかもわかりません。夏休みはじっくりと丁寧に課題と取り組める良い機会です。成果を楽しみにしています。(2011年7月16日)

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