補習校便り 2012年11,12月

補習校だより 2012年11,12月

語彙を増やして言葉の力を伸ばす(1)

         田口知子

 中学一年生の時のことです。作文の仕上げを前に、国語の先生が「少し漢語を入れるといいですね」と助言してくださいました。意味がぴんとこない私に、その先生は、平仮名言葉の文章は分かりやすいけれど、漢字の熟語を入れると、大人っぽい文章になりますよといったようなことを、丁寧に説明して下さいました。それまで漢語と和語の違いを意識したことはなかったので、この時の先生の言葉が、強く心に残りました。当時は、授業で語句ノートの作り方について教わり、宿題でまめに辞書を引いていたこともよく覚えています。

 ところで、以前、補習校だよりでも話題にとりあげたことがありますが、昨年「語彙・読解力検定」がスタートしました。これは、朝日新聞社とベネッセコーポレーションが共同で、6月と11月に行う検定試験です。語彙力がないと伝えられないことがあり、読解力は考える力につながる、という理念に基づき、言葉の力を育むことをめざしています。例えば準1級では、社会人・大学生レベルで、実社会で求められる思考力、判断力、表現力を身に付け、知識や教養を発展させるために必要な力、と説明されています。最近は、多くの高校や大学が検定を導入して、学力向上や就職活動の指導に生かしているそうです。
 ちょうど先週の職員会で、テストで漢字が書けても、実際の意味や使い方を知らない、算数の問題で、用語の意味を知らないために答えられない、といった事例が報告され、学年を問わず語彙力アップが課題だという話になりました。(2012年11月17日)

語彙を増やして言葉の力を伸ばす(2)

         田口知子

 生徒を励ます時、「数学の力を伸ばすには、自分の力よりも少し上の、骨のある問題に取り組むことが必要だ」という話をよくします。先日も「国語も同じで、読む時に考えることが必要な文章を教科書で勉強していくから、国語の力がついていくのだ」と言うと、生徒も「なるほど」とうなずいていました。すいすい読める娯楽読書と異なり、教科書には、読み応えのある文章が掲載されています。説明文で会話では使わないアカデミックな語彙を学習し、物語文では時間をかけた行間読みをします。

 例えば「見る」という動きに注目して物語文を見ていくと、小3の「ちいちゃんのかげおくり」では「見上げる」「目を落とす」小4の「ごんぎつね」では「ふと見る」「じっとのぞく」「ちらちら見え始める」「目につく」など、思いのほか多様な表現が出てきます。また、教科書には長い読み教材の間に「言葉」の学習単元が挿入されていて、段階的、集中的に語彙を増やす学習もします。語彙力の向上には、ワンランク上の読みを積み重ねていくことが必要です。そして新しく知った語彙は、実際に作文の中で使ってみることす。もちろん、読んで理解できる語彙の方が、自分で使える語彙よりも多いと思いますが、新しい語彙の定着に書くことは非常に有効です。

 このように語彙の習得は、読み書きの学習と連動しています。本校では宿題の漢字プリントで、熟語を集め、自主学習で意味調べや短文作りに取り組めるように工夫しています。教科書文の書き写しや詩の暗唱も語彙力の向上に効果があります。朝会の歌も、言葉の世界を広げることに役立ちます。語彙は一朝一夕に身につくものではありません。日々の生活や学習活動をする中で、言葉を大切にしていきたいと思います。(2012年11月24日)

語彙を増やして言葉の力を伸ばす(3)

         田口知子

 語彙が豊富だと、ニュアンスの違いまで細かく伝えることができます。英語で話していると、そのことを痛感します。英語では、必要な事柄を伝えることはできても、日本語のように微妙な部分まで伝えきれず、じれったく思うことがよくあります。最近は、日本語でさえ、的確な表現語彙がパッと思い浮かばず、こんな時は何と言ったっけなあと、考えてしまうことがあるので困ったものです。

 先ごろ久しぶりに会った友人が「船を編む」という本を置いていってくれました。先週のバザーでも、この本を見かけました。これは、辞書作りに情熱を傾ける人の物語です。話題作になっていたので、読んでみたいと思っていました。友人は、「この本を読んで、メールを書く時も考えたりするようになった。」と言っていました。私は「辞書は言葉の海を航海するために編まれた舟である」という表現が、とても新鮮で気に入りました。
 唐突ですが、ここで質問です。ピーナツは茎、根、花のどれでしょうか。答えは花です。最近のテレビ番組でそのことを知った時に、それでピーナツは落花生とも書くのかと、思わず納得。さっそく「大辞泉」で落花生の項目を調べてみると、「マメ科の一年草。茎は横にはい、葉は二対の小葉からなる複葉で互生する。夏から秋、葉のつけ根に黄色い蝶型の花をつけ、花後に子房の柄が伸びて地中に入り、実を結ぶ。子房が肥大して、網上のさやとなり、中にふつう二つの種子ができる」とありました。

 もし子ども達が知らない語彙が出てきたら、一緒に辞書を調べてみてはどうでしょう。大人にとっても何か新しい発見があるかもわかりません。また、読み聞かせをする絵本や教科書(国語だけでなく他の教科でも)を読みながら、言葉の世界を旅する楽しさを子ども達と一緒に味わっていけたらすばらしいと思います。言葉との出会いは、意識して作り出していかないと、心に残っていかないものだと思います。「言葉の海」の魅力をもっと知りたい。「船を編む」を読んで、そんな気持ちになりました。(2012年12月1日)

語彙を増やして言葉の力を伸ばす(4)

         田口知子

 ある大学で就職活動の説明会が行われ、その様子がテレビで報道されていました。途中から見始めたので、その説明会が、保護者対象だったのかどうかは、確認できませんでしたが、参加者のほとんどが保護者のようでした。子どもは会社回りで忙しいから、自分が聞いて帰り、子どもを応援したいと言う前置きの後に、母親の一人が「会社側からタフな人材を求めると聞いたが、どうすればよいか、どんなことを心がければよいか」と質問しました。すると、学校側から「面接で見られるのは、礼儀作法です。基本的なことを聞いて、しっかりした答え方ができるか、大人ときちんと話ができるかという点を見られます」親がらみの就活に常識とも思える注意。考えてしまいました。

 就職活動を乗り切るには、コミュニケーション力が求められていて、企業の採用担当責任者が、「相手に伝えたい熱意。語彙力と正しい言葉遣い。そして物ごとを深く考える力。この三つの能力を合わせた力こそが、コミュニケーション力だ」と述べていました。

 最近は学校教育でもコミュニケーション力が、重視されています。小中の新指導要領の国語の教科目標を見ると、「国語を適切に表現し正確に理解する能力を育成し、伝えあう力を高めるとともに、思考力や想像力及び言語感覚を養い、国語に対する関心を深め国語を尊重する態度を育てる」とあります。この基本はこれまでと変更ありませんが、新指導要領では、自ら学び、課題を解決していく能力の育成を重視し、日常生活に必要とされる記録、説明、報告、紹介、感想、討論などの言語活動の工夫と充実化が求められています。小中学校で、実際の生活で生きて働く言葉の力を身につけられるよう勉強してきているはずですが、豊かな言葉の使い手になるまでの道のりは、長そうです。(2012年12月8日)

ウェールズ日本人会 email
Wales Japan Club All Rights Reserved
www.walesjapanclub.comに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。