補習校便り 2014年1,3月

補習校だより1月-3月

 

「グローバル人材」とは
  田口知子
  BBCニュースで、イギリスの小学校で外国語教育の導入が検討されていることを知りました。外国語能力において、イギリスはヨーロッパ諸国内で最低であるから、外国語教育を早く始めるべきだとの意見によるものです。

ドイツ語、スペイン語、イタリア語についで、選択できる言語として、中国語があげられていました。10年程前は、日本語が注目されていましたが、これからの国際社会では、中国語が有益だとみなされているようです。いち早く中国語のレッスンを導入した小学校の教室風景が紹介されていました。中学年位の子供達が、音の上下に合わせて手を動かしながら、発音を練習したり、黒板に一から順番に漢数字を書いたりしていました。
 取材を受けた教師は、外国語の学習は、会話の練習から入って、読み書きはその後でよいと説明していました。しかし、小学校教師にとって、専門外の外国語を教えることは、チャレンジであり、最初の指導が悪いと、外国語嫌いを作って逆効果だと、課題も指摘されていました。  
 日本でも、小学校での英語教育導入に際して、同じ課題があげられていました。小学校5,6年に、英語が教科として導入されたことに続き、今度は英語に親しむ機会を小3,4年から作ろうという案も出ています。
 英語の早期学習について、英語よりも国語の勉強の方が先だという意見も強く主張されていますが、日本社会が英語重視になってきています。社内の公用語を英語にしている日本企業もあります。国家公務員の総合職の採用試験では、来年度からトーイックやトエフル、英検などの外部の英語の試験結果を得点化して、加算されるとか。行政の国際化も進んでいるからだそうです。
 しかし英語力が全てではありません。グローバル社会で求められる人材として、人材育成推進会議は、次の要素をあげています。(1)語学力・コミュニケーション能力(2)主体性、積極性、チャレンジ精神、協調性、責任感、使命感(3)異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティ。英語力については、正確性よりも、積極的にコミュニケーションをはかろうとする態度や、相手の意図や考えを的確に理解し、論理的に説明したり、反論・説得したりできる能力が求められるとされています。
 「海外子女教育」12月号に、「グローバル人材」期待を帰国性はどう受け止めるか、という特集が組まれていました。40-50才代の、キャリアを積んだ元帰国生たちが討論会で語った内容が、19ページにわたって掲載されていました。
 記事の中で、参加者の一人が「日本人としてのアイデンティティーを持つ」というのは、日本国としての考え方で、企業は別に日本人としてのアイデンティティーを持ってもらわなくてもいいんじゃないか、つまり「日本人」でなくても、日本のことが分かっていて、日本が好きで、日本の会社で働きたい、日本に住みたい人たちもグローバル人材ではないかとコメントしていました。グローバル人材という定義を、広義にとらえれば、国際社会で通用する常識と異文化に対応できる柔軟な発想と強い意志、自分らしさを持つ人、ということになりそうです。「人材」という言葉は、国家や企業側からの視点であり、個人としての幸福と直接結びついているわけではない、というコメントにも、同感です。保護者や教師が子供達に「グローバルな人に育ってほしい」と一言で言うのは簡単ですが、具体的にどういう人になってほしいか、明確なビジョンを持っていないと、子供に向き合う姿勢が、ぶれてしまうことがあるかもしれません。補習校教育の根本について、改めて考えさせられました。(2014年1月11日)

学習発表会に向けて
  田口知子
 本校では、一年間に学習したことのまとめとして、学習発表会を行っています。
 低学年は、教科書の単元から文章を選んで、音読をします。動作をつけたり、絵を見せたり、小道具を使ったりして、観客に楽しく聞いてもらえるように工夫をします。高学年になると、発展学習として調べ学習をすることがありますから、そこで新たに知ったことや学んだことなども盛り込んで、分かりやすく伝えます。中学部では、考察や討議によって深めた内容を、発表の構成や伝達手段を工夫して、観客に分かりやすく伝えます。
 言葉の力は、語彙や文型表現が基礎になります。その学年に必要な基礎知識は、国語の教科書学習を通して、伸ばしていきます。そして基礎知識は、何度も繰り返しながら、覚えていく必要があります。
 しかし、暗記学習だけでは、生きた学習にはなりません。身につけた基礎知識を、自分なりに活用する練習が必要です。そのためには、日記や作文を「書く」ことが重要です。書くことで基礎知識が定着し、考える力が働き、表現の幅が広がっていきます。書くことは、思考を整理するために必要な過程です。さらにその内容を他の人に「話す」ことによって伝えるのは、高度な表現活動になります。声の大きさやトーン、速さなどを工夫し、聞く人を意識して話せるようになるには、練習を続けることが必要です。
 全校で取り組む学習発表会には、表現活動の訓練の場としての意義を持たせています。低学年は「大きな声ではきはきと」高学年は「顔を上げて」中学部は「メリハリをつけて」発表できるように、がんばります。そして、もう一つ大切な要素があります。学習発表会はポスターセッションの一人発表とは異なり、クラス発表ですから、クラスの仲間達との協力体制が必要になります。児童生徒が、この一年間にどんなことを学習し、身につけてきたのか、見せてもらえるのを楽しみにしています。
 十分に練習をして、発表ができるように、ご家庭でも応援していただけますように、どうぞよろしくお願い致します。どんな点をがんばるか、自分なりの目標を持って、練習を続けられるとよいです。その目標を達成できれば、きっと自信につながります。発表体験を継続することで、少しずつ言葉の力を伸ばしていってほしいです。何よりも子供達一人一人が、生き生きと発表に取り組めるように願っています。そして、達成感のある楽しい学習発表会になってほしいと思います。(2014年2月8日)

卒業に寄せて
 田口知子
 小学六年生、中学三年生の皆さん、本日はご卒業おめでとうございます。本校にとって32回目の卒業式となりました。補習校に来た学年がそれぞれ違いますから、補習校で過ごした年数も、それぞれ違います。一年未満の人もいますし、9年間の人もいます。補習校で過ごした時間に関係なく、これまでの補習校での日々を振り返ると、心に残る出来事や思い出が心に浮かんでくることでしょう。そうした思い出の中で、特にそれが自分にとって大切なことだったと思えるような出来事が、ありましたか。
 ちょうど先週、皆さんの先輩の一人、岡崎君が補習校を訪ねてくれました。14年前小3で本校に転入し、中1の二学期末にロンドンの近くに引っ越すまで、本校に通学していました。高校で日本に帰国し、四月から大学院に進むそうです。私も岡崎君と一緒に、高学年の教室を、5分位ずつ見学させてもらいましたが、その時に、岡崎君が皆さんの質問に答えてくれました。
 今日は岡崎君の言葉の中から、三つ選んで、お話しします。一つ目は、「英語は武器になる」ということ。日本の勉強が遅れるのではないかと心配する人がいるかもしれませんが、一年あれば追いつける、そのかわり、他の人達が英語の勉強にかけている時間を、他の教科の勉強に使えるから、不利になることはない、と自分の体験から答えてくれました。二つ目に、「漢字などの国語の基礎をしっかりおさえておくことが大切だ。」ということ。受験で英語の文章を日本語に訳する問題が出るので、日本語の言葉の力が必要になります。三つ目に、「相手をリスペクトしていれば、いじめなどの問題は心配しなくてもよい」ということです。岡崎君自身、帰国した当時は、空気を読むことができずに困ったと言いますが、友人が、その都度、日本人のものの考え方について、丁寧に説明してくれたそうです。きっと岡崎君に、相手を大事に思う気持ちがあったから、良き友人に恵まれたのだと思います。
 岡崎君のお母様が、おっしゃいました。「母校があるのは幸せなことだ」と。「母校」いい言葉です。補習校での思い出は、これから皆さんがどんな道に進もうと、がんばる力を与えてくれるはずです。ウェールズ補習校が、皆さんにとって、友達と一緒に勉強したり遊んだりした、思い出がいっぱいつまった、ふるさとのような学校であり続けるようにと、心から願っています。(2014年3月22日)

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