校長先生の日々10: 学校文集

校長先生の日々(10)学校文集

 毎年、卒業・進級記念に発行している学校文集が、もう28号を数えます。毎年テーマを決めて、取り組んでいます。2009年度の文集のテーマは「家族」でした。作文にどんなことを書くか、題材は、生徒も先生も一緒になって、一生懸命考えます。先生達の作文は、冬休みの宿題です。私も冬休み中に作文を仕上げていましたが、休み明けの編集作業で生徒と先生の作文を読み進む内に、気持ちが揺れ始めました。
 
 どの作文からも、これが一番書きたいことだという作者の気持ちが感じられました。飾ることのない本音がつづられた作文を前に、なんだか私だけが、おざなりなことを書いてすませているような気がしてなりませんでした。しかし、編集の締切期限はせまっています。書き直している時間は、ありません。揺れる気持ちにふたをして、今年はこれでいこうと妥協することにしました。
 
そんなところへ、届いたのが元講師のM先生からの原稿です。一月末のことでした。
 
 1997年夏に日本に帰国されてからも、ほぼ毎年、文集に投稿してくださるM先生。本音をすぱっと、流れるような文体で書かれる点が魅力で、原稿が届くのがいつも大きな楽しみです。今回は一年半前に他界されたお母様の思い出を、いつもの達筆で、率直に書いてくださっていました。やはり自分だけおざなりなことを書いて、すませているわけにはいきません。編集作業締め切り間際で、書き直すことにしました。
 
 病床にある父のことは、一番に書くべきと思いながらも、考えると胸がつまり、書く勇気がどうしても出てきませんでした。しかし、生徒と先生たちの作文に背中を押されて、思い切って書き上げることができました。父にはもう文章を読む力はありませんが、書き上げて穏やかな気持ちになりました。今の思いを言葉にすることで、感謝の気持ちを、父に届けられたような気がしました。二年前の現地採用講師研修会に参加した時のことです。本校の学校文集を一冊持参し、展示していたところ、他校の先生から帰りがけにリクエストされて、さしあげたことがありました。先生達の作文に、興味がそそられたようです。

作文指導は、技術を要する分野で、教師自身が作文を書くこととは、全く別のことです。しかし、生徒と一緒に題材を考え自分を語る姿勢を見せることは、何かしら、生徒の心に響くものがあるはずです。2学期の二ヶ月間は、作文指導強化月間として、教科書の学習と並行して、作文の書き方を段階的に指導しています。学校文集はそうした作文指導の単なる結果にとどまらず、生徒と教師、そして保護者の三者の心をつないでくれる大切な存在です。これからも、心をこめて学校文集と取り組んでいきたいと思います。(2010年2月)

文集

 

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