校長先生の日々17: 日本映画の話(日々雑感)

校長先生の日々(17)日本映画の話(日々雑感)

 3月に日本映画祭(日本国際交流基金の映画上映ツアープログラム10周年記念)があると聞いて、さっそく調べてみました。すると今回は英国八か所を順番に回り、ブリストルは3月9-16日に映画リストにある10本中、5本が上映されることが分かりました。実写版「忍たま乱太郎」とアニメ「まいまいミラクル」(邦題不明)はあいにく上映が土曜日で見に行けないのが残念ですが、「八日目の蝉」と「怪談」の二つはぜひ見たいと思い、日曜日に外出がてらチケットを買いに行きました。すると「奇跡」という日本映画が上映されているではありませんか。九州新幹線開通を記念して、企画された映画だと聞いた覚えがあります。映画館で見る日本映画に、久しぶりにわくわくしました。

 小学生漫才コンビの「まえだまえだ」の兄弟が主演し、家族や学校の先生として登場する俳優達の顔ぶれも、魅力的です。ストーリーは、両親の離婚で福岡と鹿児島に離れて暮らすようになった小学生の兄弟が、上下の新幹線がすれ違う場面を見ながら、願い事をすると、奇跡が起きて願いがかなうという話を信じて旅をする話です。兄弟の願いは、また家族一緒に暮らせることです。弟は福岡から女友達三人と、兄は鹿児島から男友達二人と共に、熊本辺りの小さな駅で合流しようと計画をたてます。
 
 兄のグループがかぜを口実に学校を早退する時に、祖父と養護の先生がうその後押しをしたり、その夜偶然出会った老夫婦の家に泊めてもらったりと、話はメルヘン調で進みます。また弟がミュージシャンの夢をおいかける父親を自分の前に正座させ、「僕だっていろいろ我慢しているのだから、ギターは来月まで我慢!」と子ども手当の半分を請求する場面には、笑ってしまいました。最後に、小高い丘の上で、新幹線がすれ違うのを見ながら、みんな一斉にそれぞれの願い事を叫びます。兄は自分が叫ぶ前に、弟が父親の音楽が売れますようにと叫ぶのを聞いて、呆然と新幹線を見送ります。後で弟は、約束と違うことを叫んだことを謝まりますが、兄は一言「いいねん、僕は世界を選んでん」。兄の心の中に、以前電話で父親が「世界を大切にできる人になってほしいなあ」と言った言葉がよぎります。自分の都合より、父親の幸運を一番に願った弟。兄の世界観が変わる一瞬をとらえ、結末をメルヘンに終わらせないのが、是枝監督の映画らしさのようにも思えました。映画はPG映画ですが、観客は全員大人でほぼ満席でした。しょっちゅう笑いが起きたり、帰りがけに女性同士が「見に来てよかった」と話す声が聞こえたり、英国人にも楽しめたようで、なんだかうれしくなりました。桜島、立派な新鹿児島駅、九州新幹線、田舎の風景・・思いがけず郷愁に浸り、雑事を忘れた日曜の午後でした。

(2013年2月)

ウェールズ日本人会 email
Wales Japan Club All Rights Reserved
www.walesjapanclub.comに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。